上肢の機能
上肢(じょうし:肩から指先まで)は肩から肘までを「上腕(じょうわん)」、肘から手首までを「前腕(ぜんわん)」、手首から先を「手部」といいます。
まず、手。
手は、物を握る。指でつまむ。
などの機能を持ちますが、この握る、つまむでは「親指」が大変重要です。
親指が無ければ、握れないし、つまめないんですね。
ただし、こどものときから、親指の機能がない場合は、他の指で替わりになることが多いですね。
つまむためには、「爪」が大事です。小さなものをつまむためには、爪が添え木の役割を果たすことで、指先の柔らかさと、つまみやすさを両立しています。
また、手には、「感覚器」としての機能もあります。
手のひらや、指先の触覚は体の他の部分よりも、優れています。触っただけで、材質まで分かることも珍しくありません。
握手をしたり、身振りをしたり、コミュニケーションの表現もします。
好きな人と手をつなぐのも、ドキドキしますよね。
「手」を支えるのには、「腕」が必要です。腕、すなわち上腕、前腕の機能として重要なのは、
1 「手部」が機能するように支える。
2 逆に、「手部」を使って体を支える。
という機能です。
1 については、「リーチ」という表現から想像できるように、手の部分が適切な場所に、体本体を移動させないで届かせることが、一般に重要だと考えられていますが、じつは、それよりも、肘や肩が曲がって、「手」が自分の顔に届くことの方がより重要です。
それは、顔に手が届かなければ、、、、
鼻が痒いときとき困る。
というだけでなく、「食事が出来ない」からです。
ただし、あまりにリーチが短い場合、
お尻に手が届かない
つまり、トイレの後始末が出来ない可能性があります。
このような場合、整形外科では、関節の動く範囲を改善する手術を行ったり、腕の長さを延長する手術を行ったりします。
関節の動く範囲(関節可動域:かんせつかどういき)を広げる手術は、正常な関節の可動域をさらに広げることは基本的には出来ませんし、かえって危険でさえあります。
腕の長さを伸ばす手術では、腕の骨を一部切って、骨折が治る仕組みを利用して、少しずつ伸ばす方法(仮骨延長法:かこつえんちょうほう)が主流ですが、治療期間が非常に長くなるのが欠点です。
あと、肘から先の前腕(ぜんわん)の機能として、
手首を内側、外側にねじる。
ですが、具体的には「ドアノブをひねる」動きです。ドアノブをまわすことは、肩の動きで替わりが聴きますが、手のひらを上にする動きが出来ないと、「お茶碗が持てません。」
どちらにしても、「食べる」機能が非常に重要なのです。
2 体を支える
寝返り動作を考えてみます。
いつもは、意識していないと思いますが、仰向けから寝返りするためには腕を持ち上げたり、足を曲げて反対側に動かす必要があります。
さらに、うつぶせになったところで、腕が体の下に入ってしまうと、とても窮屈ですね。この窮屈さから逃れるためには、腕で体を持ち上げる必要があります。
さらに、うつ伏せから起き上がるためには、四つ這い(はいはいの形)になり、続いて足で踏ん張る形にするために、腕で体を支えることが出来る必要があります。
この一連の動作の中で、力が弱かったり、肘が伸びなかったりすると、とてもスムーズには起き上がれません。
また、足に障害があって、立って歩くことが出来ない場合、車いすを動かすのも腕の力ですし、車いすが使えない場所では、四つ這い(ハイハイ)で移動するか、座ったままで、腕で体を持ち上げるか、です。
腕の機能を失うことは、単に字が書けない、とか、働けないだけでなく、「食べられない」「排泄の後始末が出来ない」「自由に移動できない」など、人としての尊厳にも関わる重大なことなのですね。
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