先天性股関節脱臼(その1)
Developmental dysplasia of the hip
小児整形外科での先天性三大疾患といえば、古典的には
先天性股関節脱臼(せんてんせいこかんせつだっきゅう)
筋性斜頚(きんせいしゃけい)
先天性内反足(せんてんせいないはんそく)
ですが、このうち先天性股関節脱臼はこの20年で発生がほぼ1/10になりました。筋性斜頚と先天性内反足はほぼ横ばいです。
先天性股関節脱臼(以下、先天股脱)が減少した背景には、生活習慣の改善が大きく影響しています。
先天股脱の名前ではありますが、実際に生まれついて股関節が 「脱臼」しているものは元々少なく、その多くは、新生児期に股関節に無理な力を加えるために生じていたことが分かっています。
大人でいうところの「気をつけ」の形、つまり、股関節と膝を、 ぴんと、伸ばした状態を続けると、生まれたばかりの、弱い赤ちゃんの股関節をはだんだん脱臼してくるのです。
ケガで脱臼するものと違って、痛みは全然ありません。
そのため、現在では先天股脱は英語では
Developmental (発達性)dysplasia(形成不全)of the hip(股関節の)
と呼ぶようになりました。
いまから30年前までは、そのことが分かっていなかったためと、 「巻きおむつ」(ぐるぐる巻き)が一般的であったことから、 先天股脱は非常に多く、整形外科の中でもポピュラーなものでした。
この、おむつの巻き方により、先天股脱が生じることが分かると、 「おむつ指導」が全国的にキャンペーンされ、数が激減しました。 (京都大学の先生方が中心となった、と聞いています)
現在でも、先天股脱を発見するために開始された、乳幼児4ヶ月検診 は、各地の自治体で行われています。
まさに、予防に勝る治療はない、ということの見本といえるでしょう。
(つづく)
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