化膿性股関節炎
Septic arthritis of the hip
「化膿性」とは、「細菌による感染」という意味です。
股関節に細菌が入り込んで、強く腫れている状態です。乳幼児や、新生児(とくに低出生体重児)に多くみられます。
赤ちゃんでは、なんかぐったりしている、ミルクを飲まない、熱がある、足を動かさない、などの症状があります。乳幼児では、歩こうとしない、膝の辺りを痛がる、熱がある、食欲が無い、などの症状があります。
関節は、袋状になっていますので、細菌が入り込むと簡単には消えません。細菌は、「毒素」を出し、周りの組織を壊してしまいます。
また、関節の袋(関節包:かんせつほう)の内部の圧力が高くなることで、柔らかいこどもの関節軟骨が破壊されてしまいます。
また、骨が成長する部分である「骨端線(こったんせん)」も、関節の近く にあるため、壊されてしまうこともあります。
つまり、化膿性関節炎になってしまった場合、
1 関節の形が変形してしまう。
2 成長障害が起こる。
という、重大な結果になることがあります。
関節の変形が強い場合、股関節では、脱臼した上に、元に戻せなくなることがあります。当然、後日手術治療が必要になります。
成長障害とは、つまり、股関節の場合、足の長さが短くなる、ということです。ひどい場合は、大人になって30センチもの左右差が出ることがあります。
また、基本的には無菌的環境である関節包に、細菌がいる、ということは、血液の流れにより、骨や関節に細菌が運ばれた結果生じると考えられます。つまり、血液の中にも細菌が繁殖している、「敗血症(はいけっしょう)」という、大変重症な病気の危険性も高いのです。敗血症は、全身に細菌が存在する高い病気で、納、肺、腎臓、肝臓などあらゆる臓器を悪くする可能性が高く、命に関わる病気です。
(敗血症は、基本的には抗生物質の点滴で治療します。)
抗生物質の点滴で、発熱などの症状は軽くなることが多いのですが、関節の内部には抗生物質は届きにくいために、関節炎への効果は不十分です。
そこで、変形や、成長障害をおこすことを防ぐためには、診断がつき次第、手術治療が好ましいと思います。
具体的には、関節を切り開き、なかの細菌を洗い流すことです。場合によっては、関節の内部にチューブを取り付けて、しばらく持続的に洗い流す処置を行うこともあります。
関節の変形や、成長障害が起こる前に、徹底的な治療が必要です。発症してから数日以内(出来れば2日以内)に治療しなければいけませんので、小児の救急疾患と言えるでしょう。
化膿性股関節炎と、単純性股関節炎は、最初の段階では見分けることが難しく、そして、その結果がぜんぜん違うので、見極めることに大変気を使います。
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