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肢体不自由児施設とは

いまから、50年ほど前、戦後すぐの頃に「ポリオ」という病気が大変猛威をふるった時期がありました。

「ポリオ」という病気は脊髄(せきずい)にある運動神経中枢を破壊するウイルス感染症です。風邪症状から発症しますが、高熱が出て手足がマヒする特徴があります。

マヒが改善することはほとんどありません。

また、脊髄の病気であり脳は正常ですから、知的障害を起こすことはありません。

当時は手足が不自由な子供を教育する方法が乏しかった上に、生活も楽ではなかったため、ポリオの子供たちへの高等教育はおろか、義務教育でさえ、ままならない状態でした。


手足が不自由な子供たちにも、義務教育を保証し、また社会参加力を育てるための機能訓練(いわゆるリハビリ)を行う施設として、「肢体不自由児施設」が誕生しました。

昭和20年から30年頃の話です。

病院などの医療機関とは異なり、「児童福祉法」という法律を設置根拠として、各都道府県に1カ所以上設置されています。(公設の場合と民営の場合があります。)


治療の場でもあり、生活の場でもある、そんな施設です。


世界的に見ても、教育、医療、福祉が一体となった取り組みとして珍しく、また、胸を張ってよい素晴らしい制度ですが、近年疾病構造の変化とともに存在意義が変化してきているのも事実です。


設立当初は「ポリオ(小児まひ)」が主な対象でしたが、ワクチンの普及とともにポリオは激減し、現在では自然発生はありません。


(注意:日本国内の話です。アジアやインド、アフリカなどではまだ発生があります。旅行の際は、注意しましょう!)


かわりに、出産時などの事故や未熟児として生まれる子供が救命できるようになり、「脳障害によるマヒ(脳性小児まひ)」が主体となってきています。

また、各地に総合病院としての「こども病院」が整備されるに伴い、長らく子供のマヒ治療に取り組んできた「肢体不自由児施設」は福祉施設としての要素も強いことから、「医療」よりは「福祉」に重点を置くところが増えています。

医療では対応困難な「障害児」を福祉で支える訳ですが、近年、手足の障害を持つ子供は比較的地域での受け入れが良くなった替わりに「発達障害」といわれる、知的障害児が激増しています。


激増というよりも、かつては診断できなかった「学習障害」「ADHD」などの「障害」を認識できるようになった、と言うべきと思います。


現在、発達障害児を含めた知的障害児は肢体不自由児の10倍以上と推定されており、知的障害児への対応が望まれています。

また、現在の医療制度の元では、大人になった「障害者」に対する障害者医療は手間と時間がかかる一方で、利益は少なく、効率の面でおざなりになっている面があるのですが、肢体不自由児施設が障害者医療を担っている面も大きいのです。

肢体不自由児自体も、障害が重度化する傾向にあり、日常生活を全面介助が必要であり、かつ、人工呼吸器などの高度医療も必要とするこども(重症心身障害児、といいます)の割合が増加しています。

重症心身障害児は肢体不自由児施設ではなく、別の枠組みである「重症心身障害児(者)施設」でケアを受けることになっています。


肢体不自由児施設に重症心身障害児施設を併設し、総合センター化する施設が増えているのですが、多くは赤字運営で、運営が困難な施設も少なくありません。


ご家族の不安や負担を出来るだけ軽くしつつ、すこしでも健康な生活が出来るよう、取り組んでいく必要があります。

しかし、入所施設を減らす傾向にある昨今の福祉行政の中、財政効率一辺倒な医療改革に、ちょっと、疑問を感じる今日この頃です。



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